機械加工の基礎:ドリル加工

コラム加工学機械工学

機械加工の基礎:ドリル編

ドリル加工とは

ドリル加工は、回転するドリルと呼ばれる切削工具を用いて、被削材に穴を開ける加工方法であり、機械加工の中でも最も基本的かつ広範に用いられる技術の一つです。金属、木材、プラスチックなど、様々な材料に対して穴あけが可能であり、その用途は、製品の組み立てにおける部品の接合穴、配線や配管を通すための穴、あるいは単に材料に穴を形成するためなど、多岐にわたります。

ドリル加工は、手動のハンドドリルから、ボール盤、旋盤、フライス盤、マシニングセンタといった工作機械まで、様々な機械を用いて行われます。

ドリルビット

ドリル加工に用いられるドリルビットには、様々な種類と形状があります。最も一般的なのは、ツイストドリルであり、らせん状の溝(フルート)を持つ形状が特徴です。このフルートは、切削された切りくずを排出し、切削油剤を刃先に供給する役割を果たします。ドリルの先端の刃先角は、被削材の材質によって適切な角度が選択され、一般的には金属には118度、軟らかい材料にはより鋭角な角度が用いられます。ドリルの材質も様々で、高速度鋼(ハイス)、超硬合金などが用いられ、被削材の硬度や加工速度に応じて選択されます。

・ハイスドリル
高速度工具鋼(ハイス)と呼ばれる合金製のドリルです。ハイスドリルのメリットとしては、安価であること、材質的に粘り強く刃先がかけにくい点があげられます。また振動にも強いため断続負荷の切削にも向いています。

・超硬ドリル
超硬合金製のドリルです。超硬合金はタングステンやタンタルなどの粉末を焼結して作られます。非常に硬度が高く高温条件下でも硬度低下を起こしにくい特徴があります。材質として硬度が高いので工具のゆがみが少なく高精度な加工を行うことができます。

一方で硬度が高いため衝撃などにより刃先が破損しやすいというデメリットを持っています。
ハイスドリルに比べて高価なためドリル全体を超硬合金製とせずにドリル先端部のチップのみを超硬合金製とするドリルもあります。
 

ドリル加工の要素

ドリル加工を行う際には、いくつかの重要な要素を考慮する必要があります。まず、適切なドリルビットの選択です。被削材の材質、穴の径と深さ、そして求められる精度によって、最適な材質、形状、サイズのドリルビットを選ぶことが重要です。

次に、切削速度と送り速度の設定です。切削速度はドリルの回転速度、送り速度はドリルが被削材に送り込まれる速度であり、これらの設定が不適切だと、ドリルの摩耗が早まったり、加工精度が低下したりする原因となります。一般的には、被削材の材質やドリルの材質、径などに基づいて、経験的なデータや計算によって適切な値が設定されます。

また、ドリル加工においては、切りくずの排出が非常に重要です。切りくずが穴の中に詰まると、ドリルの回転を阻害し、摩擦熱の発生やドリルの折損につながる可能性があります。そのため、深穴加工などでは、ドリルを数回に分けて送り込み、その都度切りくずを排出する「ペッキング」と呼ばれる方法が用いられます。さらに、切削油剤の使用も、切りくずの排出を助け、摩擦熱を低減し、加工面の品質を向上させる上で重要な役割を果たします。

ドリル加工の種類

ドリル加工の種類も様々です。通常の穴あけ加工の他に、座ぐり加工、皿ざぐり加工、リーマ加工、中ぐり加工などがあります。これらの加工は、それぞれ専用の工具を用いて行われますが、基本的な原理はドリルによる回転切削に基づいています。

ドリル加工の現状

近年では、数値制御(NC)工作機械の普及により、プログラミングによって自動的に高精度な穴あけ加工を行うことが可能になっています。これにより、複雑な形状の穴や、多数の穴を効率的に加工することができます。しかし、どのような加工方法を用いる場合でも、安全に作業を行うことが最も重要であり、保護メガネの着用や、回転部に手や衣服を近づけないなどの基本的な安全対策を徹底する必要があります。

ドリル加工は、ものづくりにおける基礎的ながらも不可欠な技術であり、その原理と適切な作業方法を理解することは、様々な加工分野において重要な意味を持ちます。

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