
機械材料の基礎:マグネシウム合金
CC by Morio
マグネシウム合金とは
マグネシウム合金は、実用金属の中で最も軽量な金属であるマグネシウム(Mg)を主成分とし、その軽量性を維持しつつ、強度、耐食性、加工性などの特性を向上させるために、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、シリコン(Si)、希土類元素(RE)などの様々な元素を添加した合金の総称です。その比重はアルミニウム合金の約3分の2、鉄の約4分の1と非常に軽量でありながら、特定の合金では高い強度を発揮するため、輸送機器、電子機器、スポーツ用品、医療機器など、軽量化が重要な多くの分野で利用されています。
マグネシウム合金の特徴
マグネシウム合金の大きな特徴の一つはその軽量性ですが、初期のマグネシウムは耐食性が低いという課題がありました。しかし、合金元素の添加や製造プロセスの改善により、現在では実用的な耐食性を持つ合金が開発されています。特に、アルミニウムや亜鉛を添加したAZ系合金や、希土類元素を添加したAE系、AM系、ZE系合金などは、強度と耐食性のバランスに優れています。
マグネシウム合金の種類は、主に添加元素の組成によって分類されます。AZ系合金(Mg-Al-Zn系)は、最も一般的で汎用性が高く、比較的高い強度と良好な鋳造性を持ちます。自動車部品やダイカスト製品などに広く利用されています。AM系合金(Mg-Al-Mn系)は、AZ系よりも延性に優れ、板材や鍛造材として用いられます。AE系合金(Mg-Al-希土類系)は、高温強度に優れており、自動車のエンジン部品などに利用されます。ZE系合金(Mg-Zn-希土類系)は、高い強度と優れたクリープ特性を持ち、航空宇宙分野での応用も期待されています。
マグネシウム合金の製造法
マグネシウム合金の製造方法は、主にダイカスト、砂型鋳造、金型鋳造などの鋳造法や、押出、圧延、鍛造などの塑性加工法が用いられます。ダイカストは、複雑な形状の部品を大量に生産するのに適しており、自動車部品や電子機器筐体などに多用されます。塑性加工は、強度や靭性を向上させるために行われ、航空機部品やスポーツ用品などに利用されます。
マグネシウム合金の用途
マグネシウム合金の用途は多岐にわたります。自動車分野では、軽量化による燃費向上や運動性能の向上を目指して、エンジン部品、トランスミッションケース、ステアリングホイールなどに利用されています。航空宇宙分野では、機体構造材やエンジン部品など、極限の軽量化が求められる箇所での利用が研究されています。電子機器分野では、ノートパソコンやスマートフォンの筐体などに採用され、軽量化と放熱性に貢献しています。医療分野では、生体吸収性を持つマグネシウム合金が開発されており、手術用インプラントなどへの応用が期待されています。スポーツ用品分野では、自転車フレームやゴルフクラブなどに利用され、軽量性と振動吸収性を両立させています。
しかしながら、マグネシウム合金は、鉄やアルミニウム合金に比べて燃えやすいという性質を持つため、取り扱いには注意が必要です。また、切削加工時には発火の危険性があるため、専用の切削油を使用するなどの対策が必要です。さらに、コストも他の金属材料に比べてやや高い傾向があります。
マグネシウム合金の現状
それでも、マグネシウム合金の持つ軽量性という大きなメリットは、様々な産業分野において魅力的であり、今後、製造技術の進歩や新たな合金の開発によって、その用途はますます拡大していくと予想されます。特に、環境意識の高まりから、輸送機器の軽量化ニーズは高まっており、マグネシウム合金はその有力な候補材料の一つと言えるでしょう。
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