機械要素の基礎:軸受

コラム機械要素

機械要素の基礎:軸受

軸受とは

軸受は、回転または往復運動をする軸を、ハウジングと呼ばれる固定側の部品に対して正確な位置で支持し、その運動を円滑にするための機械要素です。

軸が受ける荷重を支えながら、軸と支持部との間の摩擦や摩耗を低減することが主な目的です。あらゆる回転機械や可動機構において、その性能、効率、寿命を左右する極めて重要な部品と言えます。

軸受の基本的な機能

軸受は主に以下の機能を持っています。

  • 荷重の支持: 軸に作用する力、すなわち軸に垂直な方向のラジアル荷重や、軸の長手方向のアキシアル荷重またはスラスト荷重を受け止め、支持します。

  • 摩擦の低減: 軸が回転または摺動する際の抵抗をできるだけ小さくし、エネルギー損失を抑え、円滑な運動を可能にします。

  • 軸の位置決め: 軸が正しい位置からずれないように案内し、機械全体の精度を保ちます。

  • 摩耗の防止: 軸とそれを支持する部分が直接接触して摩耗するのを防ぎ、部品の寿命を延ばします。

軸受の主な種類

軸受は、その構造と動作原理によって、大きく二つの種類に分類されます。

  • すべり軸受: 軸と軸受面が直接、あるいは潤滑油などの流体膜を介して滑り接触するタイプの軸受です。軸と軸受の間に形成される油膜によって荷重を支える流体潤滑軸受や、油やグリースなどの潤滑剤を必要とする境界潤滑軸受、あるいは自己潤滑性を持つ材料で作られた無潤滑軸受などがあります。構造が比較的単純で、運転音が静か、衝撃荷重に強い、高速回転や重荷重に適するものがある、などの特徴があります。一方、起動時の摩擦が比較的大きく、多くの場合、安定した潤滑が必要です。代表的なものに、ラジアル荷重を支えるジャーナル軸受、アキシアル荷重を支えるスラスト軸受、単純な円筒形のブシュ、潤滑油を含浸させた焼結金属製の含油軸受、自己潤滑性プラスチック製の樹脂軸受などがあります。ナイロンなども樹脂軸受の材料として使われます。

  • 転がり軸受: 軸を支持する内輪と、ハウジングに固定される外輪との間に、複数の転動体、すなわち玉またはころを配置し、これらの転動体が転がることによって軸の回転を支えるタイプの軸受です。滑り接触に比べて転がり接触は摩擦が格段に小さいため、起動トルクが小さく、高い効率が得られます。また、寸法が国際的に規格化されており、互換性が高く入手しやすい利点があります。内部には、転動体同士が接触しないように適切な間隔を保つための保持器が通常組み込まれています。転動体の種類によって、玉軸受と、ころ軸受に大別されます。
    • 玉軸受: 転動体として鋼球を使用します。比較的摩擦が少なく高速回転に適しており、ラジアル荷重とある程度のアキシアル荷重を同時に受けることができます。最も一般的な深溝玉軸受、アキシアル荷重負荷能力を高めたアンギュラ玉軸受、軸の傾きに対応できる自動調心玉軸受、アキシアル荷重専用のスラスト玉軸受などがあります。
    • ころ軸受: 転動体として円筒状、針状、円すい状、たる状などのころを使用します。一般に、玉軸受よりも大きな荷重、特にラジアル荷重に対する負荷能力が高い特徴があります。ラジアル負荷能力が大きい円筒ころ軸受、断面積が小さくコンパクトな針状ころ軸受、ラジアル荷重と大きなアキシアル荷重を同時に受けられる円すいころ軸受、高い負荷能力と調心性を持つ自動調心ころ軸受、重アキシアル荷重用のスラストころ軸受など、用途に応じて様々な種類があります。

その他の軸受の種類

上記以外にも特殊な軸受が存在します。磁力によって軸を非接触で浮上させて支持する磁気軸受、圧縮空気などの気体膜で軸を支持する空気軸受や気体軸受は、摩擦が極めて小さく、超高速回転や超精密位置決めなどに用いられます。時計や精密測定器などでは、摩擦と摩耗を極限まで減らすために、ルビーなどの硬質な宝石を用いた宝石軸受が使われることもあります。

軸受の選定要因

最適な軸受を選定するためには、多くの要因を考慮する必要があります。負荷の種類、大きさ、方向、回転速度、要求される回転精度や剛性、運転温度、潤滑方法や条件、設置スペース、周囲の環境条件、例えば塵埃や水分の有無、期待される寿命、コスト、そして組み立てや分解のしやすさなどです。

潤滑と密封

すべり軸受の多くと、全ての転がり軸受は、その性能を維持し寿命を確保するために適切な潤滑が不可欠です。潤滑剤、主に潤滑油やグリースは、摩擦と摩耗を低減するだけでなく、発生する熱を冷却し、錆や腐食を防ぎ、内部に入り込んだ異物を洗い流す役割も担います。潤滑剤の種類、量、補給方法、交換周期などを適切に管理することが重要です。

転がり軸受では、内部の潤滑剤を保持し、外部からの塵や水などの異物の侵入を防ぐために、シールやシールドと呼ばれる密封装置が組み込まれているものが多くあります。また、軸受を取り付けるハウジング側にも別途シール装置が設けられることが一般的です。

取り付けと取り扱い

軸受、特に精密な転がり軸受は、その性能を十分に発揮させ、設計通りの寿命を得るためには、正しい方法で軸やハウジングに取り付けることが極めて重要です。取り付け時の過大な力の負荷、打痕や傷の発生、異物の混入などは、早期損傷の大きな原因となります。清潔な環境で、専用の工具を用い、適切なはめあい管理の下で丁寧に取り扱う必要があります。

まとめ

軸受は、軸の回転や直線運動を円滑にし、荷重を確実に支持することで、あらゆる機械装置の安定した動作と長寿命化を実現する上で欠かせない基幹的な機械要素です。

単純なすべり軸受から高精度な転がり軸受、さらには非接触の磁気軸受や空気軸受まで、その種類は多岐にわたり、それぞれの用途や使用条件に応じて最適なものが選定、利用されています。適切な軸受の選択と正しい使用、そして適切な潤滑と保守が、機械全体の信頼性を支える鍵となります。

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