機械加工の基礎:ブロー成形

加工学加工機械

ブロー成形は、中空形状のプラスチック製品を製造するための、代表的な熱可塑性樹脂の加工法です。ブローとは「息を吹く」という意味であり、その名の通り、加熱して軟化させた樹脂に圧縮空気を吹き込み、風船のように膨らませて金型に押し当てることで、製品を成形します。この原理は、古くから行われているガラス吹きの技術を、プラスチックに応用したものです。

飲料用ペットボトル、洗剤の容器、自動車の燃料タンク、大型の貯蔵タンクに至るまで、私たちの身の回りにある、継ぎ目のない中空のプラスチック製品のほとんどが、このブロー成形によって生み出されています。その工学的な本質は、比較的低コストな設備と金型で、複雑な中空製品を極めて高い生産性で製造できる点にあります。


中空形状創成の原理

ブロー成形の基本的なプロセスは、使用する金型が雌型であるという点で、射出成形などと大きく異なります。金型は、最終製品の外形を反転させた空洞(キャビティ)を持っており、通常は二つに分割されています。

プロセスは、以下のステップで進行します。

  1. 予備成形体の準備: まず、加熱して溶融したプラスチックで、パイプ状または試験管状の予備成形体を作ります。
  2. 型締め: この軟らかい予備成形体を、開いた金型の間に配置し、金型を閉じて挟み込みます。
  3. ブローイング(空気の吹込み): ブローピンと呼ばれるノズルから、予備成形体の内部に圧縮空気を勢いよく吹き込みます。
  4. 賦形と冷却: 圧縮空気の圧力(内圧)によって、軟らかいプラスチックは風船のように膨らみ、金型の冷たい内壁(キャビティ表面)に押し付けられます。プラスチックは金型に接触することで冷却され、その形状を保ったまま固化します。
  5. 型開き・取り出し: プラスチックが十分に冷却・固化したら、内部の空気を排出し、金型を開いて、成形された中空製品を取り出します。

主要なブロー成形の方式

この予備成形体をどのように作るかによって、ブロー成形は、工学的に大きく三つの異なる方式に分類されます。

1. 押出ブロー成形

最も一般的で、広範囲の製品に適用されている方式です。

  • 原理: まず、押出機を用いて、溶融したプラスチックを円筒状のダイから連続的に押し出し、パリソンと呼ばれる、熱く柔らかいパイプ状の樹脂を成形します。 このパリソンが、所定の長さまで垂れ下がってきたところで、その周囲を分割金型で挟み込みます。この型締めの際、パリソンの下端は金型によって強く挟み込まれ、溶着して閉じられます。この部分をピンチオフと呼びます。 直ちに、ブローピンから空気を吹き込み、パリソンを膨らませて金型に押し当て、冷却・固化させます。
  • 特徴:
    • 利点: 成形サイクルが非常に速く、生産性が高いです。金型構造が比較的単純で、設備コストも安価です。洗剤のボトルから、自動車のダクト、大型のタンクまで、大小様々な製品の成形が可能です。
    • 工学的な課題: パリソンは、押出機から垂れ下がる際に、自らの重みで伸びてしまいます(ドローダウン)。これにより、製品の上部(押出機に近い側)の肉厚が厚くなり、下部の肉厚が薄くなるという、肉厚の不均一が生じやすくなります。 また、ピンチオフ部は、溶着した樹脂の「バリ」として残り、後工程で切除する必要があります。この部分は、製品の強度的な弱点にもなり得ます。

2. 射出ブロー成形

二つの異なる金型を用いる、二段階のプロセスが特徴の方式です。

  • 原理:
    • 第1ステージ: まず、射出成形機を用いて、プリフォームと呼ばれる、最終製品の口部(ねじ部など)が完成した、試験管状の予備成形体を精密に成形します。
    • 第2ステージ: 次に、このプリフォームを(多くの場合、まだ温かいまま)、ブロー成形用の金型へと移送します。そして、その内部に空気を吹き込み、最終的な胴体部分を膨らませて成形します。
  • 特徴:
    • 利点: 製品の口部(ねじ部)の寸法精度が極めて高いのが最大の利点です。また、押出ブロー成形のようなピンチオフ部が存在しないため、バリが一切発生せず、外観が美しく、強度も均一です。
    • 工学的な課題: 射出成形金型とブロー成形金型という、二種類の高価な金型が必要となるため、金型コストが非常に高くなります。そのため、大量生産される小型の容器(化粧品、薬品ボトルなど)に、その用途が限定されます。

3. 延伸ブロー成形

射出ブロー成形の応用形であり、特にPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂の特性を最大限に引き出すために開発された、最も高度なブロー成形技術です。飲料用のペットボトルは、ほぼ全てこの方式で作られています。

  • 原理: 射出ブロー成形と同様に、まず射出成形でプリフォームを作ります。 次に、このプリフォームを、成形に最適な温度(PETの場合、約100度)まで、精密に再加熱します。 そして、ブロー金型の中で、延伸ロッドと呼ばれる棒でプリフォームを軸方向(縦方向)に機械的に引き伸ばすのと同時に、圧縮空気を吹き込んで周方向(横方向)に膨らませます。
  • 特徴:
    • 二軸延伸による分子配向: この「縦」と「横」への同時引き伸ばし(二軸延伸)こそが、この技術の核心です。このプロセスにより、ランダムな状態だったPETの分子鎖が、規則正しく整列します(配向結晶化)。
    • 利点: 分子鎖が配向したPETは、元の状態とは比較にならないほど、機械的強度透明性、そして炭酸ガスなどを閉じ込めるガスバリア性が飛躍的に向上します。これにより、極めて薄肉で軽量でありながら、炭酸ガスの内圧に耐えうる、透明で強靭なペットボトルが実現できるのです。

工学的な管理点

  • パリソンの肉厚制御: 押出ブロー成形において、製品の肉厚を均一にするため、押出機側のダイの隙間を、パリソンを押し出すタイミングに合わせて動的に変化させ、パリソン自体の肉厚をあらかじめ不均一にしておくパリソンコントロールという高度な制御技術が不可欠です。
  • 材料の選定: ブロー成形、特に押出ブロー成形では、パリソンが自重で垂れ下がっても、ちぎれたり、過度に伸びたりしない、高い溶融張力(メルトストレングス)を持つグレードのプラスチック材料を選定することが重要です。
  • 冷却時間: ブロー成形の全サイクルタイムの中で、最も長い時間を占めるのが冷却工程です。この冷却時間をいかに短縮するかが、生産性を左右する最大の鍵となります。金型の冷却水路の設計や、金型の材質(熱伝導性の良いアルミニウムなど)の選定が、工学的なポイントとなります。

まとめ

ブロー成形は、圧縮空気という単純な力を利用して、プラスチックシートやパイプを中空の立体製品へと生まれ変わらせる、極めて高効率な製造技術です。

押出ブロー成形がもたらす高い生産性と汎用性、射出ブロー成形がもたらす高い口部精度、そして延伸ブロー成形がもたらす材料の究極の高性能化。これらの多様なプロセスは、製品に求められるコスト、精度、そして機能に応じて使い分けられ、私たちの生活に欠かせない、軽量で安全なプラスチック容器の大量供給を、今日も支え続けているのです。

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