機械材料

機械材料の基礎:ダイヤモンドライクカーボン(DLC)

ダイヤモンドライクカーボン、一般にDLCと略されるこの材料は、その名の通り、ダイヤモンドに類似した優れた物理的・化学的特性を持つ、非晶質(アモルファス)の炭素薄膜の総称です。それは、純粋なダイヤモンドやグラファイトとは異なる、第三の炭素材料とも言える存在であり、極めて高い硬度と低い摩擦係数、そして優れた耐摩耗性を併せ持つことから、現代のトライボロジー(摩擦・摩耗・潤滑の科学)分野において、最も注目され、広く実用化されている表面改質技術の一つです。
加工学

機械加工の基礎:プロジェクション溶接

プロジェクション溶接は、抵抗溶接の一種であり、接合したい部品の一方、あるいは両方に、あらかじめ突起(プロジェクション)を設けておくことを最大の特徴とします。この突起を利用して、溶接電流と加圧力を意図的に一点または複数点に集中させ、効率的かつ精密に接合を行う技術です。スポット溶接が、電極の先端形状によって電流集中を図るのに対し、プロジェクション溶接は、部品自身に設けられた突起がその役割を担います。この原理的な違いが、プロジェクション溶接に、スポット溶接にはない多くの利点をもたらします。
加工学

機械加工の基礎:シーム溶接

シーム溶接は、重ね合わせた金属板を円盤状の電極で挟み込み、加圧しながら回転させて通電することで、連続的な溶接部を形成する抵抗溶接の一種です。英語ではResistance Seam Weldingと呼ばれます。自動車の燃料タンクやマフラー、ドラム缶、石油ストーブのタンク、そして缶詰の缶など、気密性や水密性が求められる容器状の製品製造において、この技術は不可欠な役割を果たしています。
機械材料

機械材料の基礎:マルエージング鋼

マルエージング鋼は、極めて高い強度と、優れた靭性(破壊に対する抵抗力)を両立させた、特殊な超高強度鋼です。その名称は、この鋼が持つ特異な強化メカニズムである「マルテンサイト組織をエージング(時効硬化)させる」ことに由来します。一般的な高強度鋼が、炭素を利用してマルテンサイト組織そのものを硬化させるのに対し、マルエージング鋼は、炭素含有量を極めて低く(通常0.03%以下)抑え、代わりにニッケルを18%程度と多量に含み、さらにコバルト、モリブデン、チタンといった合金元素を添加しています。このユニークな成分設計と、特殊な熱処理の組み合わせにより、他の鋼材では達成困難な、卓越した機械的特性が引き出されます。
加工学

機械加工の基礎:切削油剤

切削油剤は、旋盤加工、フライス加工、穴あけ加工といった切削加工において、加工点に供給される液体の総称です。クーラントとも呼ばれます。その主な目的は、加工中に発生する様々な問題を抑制し、加工の精度、効率、そして工具の寿命を向上させることにあります。一見すると地味な存在ですが、切削油剤は、切削という物理現象を円滑に進めるための「潤滑油」であり、「冷却水」であり、そして「洗浄液」でもある、極めて多機能で重要な役割を担っています。適切な切削油剤の選定と使用は、現代の精密なものづくりにおいて、加工品質と生産性を左右する、決定的な要素の一つです。
表面処理

表面処理の基礎:リン酸塩処理

リン酸塩処理は、主に鉄鋼材料の表面に、リン酸イオンを含む酸性の処理液を用いて、化学的に不溶性のリン酸塩皮膜を生成させる化成処理の一種です。パーカーライジングやボンデライトといった商品名でも知られています。この技術の本質は、めっきのように外部から異種金属の層を「被せる」のではなく、処理液と母材金属自身との化学反応を利用して、母材表面そのものを、新たな性質を持つ安定な化合物層へと「転換」させる点にあります。この化成皮膜は、母材と一体化しているため密着性に優れ、主に塗装下地としての塗膜密着性の向上、あるいは防錆、耐摩耗性の向上といった、多様な機能性を金属表面に付与します。
表面処理

表面処理の基礎:酸洗い

酸洗いは、金属製品の表面に存在する酸化皮膜、スケール(熱間加工時に生成する厚い酸化物層)、あるいは錆といった不要な酸化物を、酸の化学的な溶解作用によって除去する表面処理技術です。ピクリングとも呼ばれます。その本質は、金属そのものではなく、表面を覆っている酸化物を、選択的に溶かし去ることにあります。めっき、塗装、溶融亜鉛めっきといった後工程の品質は、下地である金属表面がどれだけ清浄であるかに大きく依存するため、酸洗いは、これらの表面処理を行う前の極めて重要な前処理として、鉄鋼業をはじめとする金属加工の現場で不可欠な役割を担っています。
表面処理

表面処理の基礎:ラップ研磨

ラップ研磨は、ラップと呼ばれる平坦な定盤と、加工される工作物の間に、遊離砥粒と呼ばれる微細な硬い粒子と加工液を混ぜ合わせたラップ剤(スラリー)を供給し、加圧しながら相対運動させることで、工作物の表面を極めて平滑かつ高精度な平面に仕上げる精密加工法です。ラッピングとも呼ばれます。
機械材料

機械材料の基礎:サーメット

サーメットは、その名称が示す通り、セラミックスとメタルの二つの単語を組み合わせて作られた複合材料です。その工学的な本質は、セラミックスが持つ、極めて高い硬度、耐摩耗性、耐熱性といった長所と、金属が持つ、破壊に対する抵抗力、すなわち高い靭性という長所を、一つの材料の中に両立させることにあります。
機械材料

機械素材の基礎:ニトリルゴム NBR

ニトリルゴムは、アクリロニトリルとブタジエンの共重合によって得られる合成ゴムであり、一般にNBRという略称で広く知られています。その工学的な最大の特徴は、他の汎用ゴムが持ち得ない、極めて優れた耐油性と耐燃料性にあります。この特性により、ニトリルゴムは、自動車のエンジンルーム、油圧機器、産業機械など、鉱物油やグリース、燃料に直接触れる環境下で使用されるシール材やホースの材料として、絶対的な地位を確立しています。
機械材料

機械材料の基礎:クロロプレンゴム CR

クロロプレンゴムは、化学的にはポリクロロプレンと呼ばれ、クロロプレンというモノマーを重合させて得られる合成ゴムの一種です。その最も有名な商品名であるネオプレンとして、広く世界に知られています。1930年代に米デュポン社によって工業化された、最も歴史のある合成ゴムの一つであり、その登場は、天然ゴムに依存していた産業界に大きな変革をもたらしました。
機械要素

機械要素の基礎:スプライン

スプラインは、軸とその軸にはめ込まれるボス(歯車やプーリーなどの穴を持つ部品)との間で、回転トルクを伝達するために用いられる、機械要素です。その最も特徴的な形状は、軸の円周上に、複数のキー(凸歯)と溝(凹歯)を、等間隔に、軸と平行に設けたものです。ボス側には、この軸側のスプラインと精密にかみ合う、対になった溝と歯が加工されています。一本のキーでトルクを伝達するキー溝とは異なり、スプラインは、多数の歯が同時にかみ合うことで、荷重を円周全体に分散させます。この原理により、スプラインは、同じ軸径のキー溝に比べて、遥かに大きなトルクを伝達する能力と、優れた調心性を備えています。その高い信頼性から、自動車のトランスミッションや、産業機械の動力伝達部といった、最も過酷で、最も高い精度が要求される、機械の心臓部で不可欠な役割を担っています。
機械要素

機械要素の基礎:スプロケット

スプロケットは、ローラーチェーンやタイミングベルトといった、巻掛け伝動要素と精密にかみ合い、動力を伝達、あるいは物体を搬送するための、歯車状の機械要素です。日本語では鎖歯車とも呼ばれます。一般的な歯車(ギヤ)が、他の歯車という剛体と直接かみ合って回転運動を伝達するのに対し、スプロケットは、チェーンやベルトという「たわみ性」を持つ要素を介して、離れた軸同士で回転運動を伝達する点が、工学的な本質の違いです。この特性により、スプロケットとチェーンの組み合わせは、二つの軸の間に、ある程度の距離(軸間距離)が必要な場合に、極めて効率的で確実な動力伝達手段として、自転車、オートバイから、巨大な産業用コンベアまで、あらゆる機械に広く採用されています。
加工学

機械加工の基礎:加工硬化

加工硬化は、金属材料に、その弾性限度を超える力を加えて塑性変形させた際に、その金属が硬く、そして強くなる現象です。ひずみ硬化とも呼ばれます。身近な例では、針金を繰り返し曲げると、曲げた部分が次第に硬くなり、さらに曲げるのに大きな力が必要になる現象が加工硬化です。この現象は、金属を意図的に強化するための有効な手段として利用される一方で、プレス加工や引き抜き加工といった塑性加工の際には、加工を困難にする要因ともなります。
加工学

機械加工の基礎:マシニングセンタ

マシニングセンタは、フライス削り、穴あけ、ねじ切り、中ぐりといった、複数の異なる切削加工の機能を一台に統合し、それらの工程をプログラムに基づいて全自動で行う、コンピュータ数値制御の工作機械です。その最大の特徴は、自動工具交換装置、すなわちATCを搭載している点にあります。このATCの存在により、マシニングセンタは、加工の途中で人間の介在を必要とせずに、ドリルやエンドミル、タップといった多種多様な工具を自動で交換し、複雑な形状の部品を、一度の段取り(ワンチャック)で、最初から最後まで一貫して加工し終えることができます。
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