プロジェクション溶接は、抵抗溶接の一種であり、接合したい部品の一方、あるいは両方に、あらかじめ突起(プロジェクション)を設けておくことを最大の特徴とします。この突起を利用して、溶接電流と加圧力を意図的に一点または複数点に集中させ、効率的かつ精密に接合を行う技術です。
スポット溶接が、電極の先端形状によって電流集中を図るのに対し、プロジェクション溶接は、部品自身に設けられた突起がその役割を担います。この原理的な違いが、プロジェクション溶接に、スポット溶接にはない多くの利点をもたらします。
溶接の原理:突起による電流と圧力の集中
プロジェクション溶接の物理的な原理も、スポット溶接と同様に、ジュール熱(Q = I² × R × t)による抵抗発熱に基づいています。しかし、その熱が発生する場所が、部品に設けられた突起によって、極めて精密にコントロールされます。
- 初期接触と加圧: まず、突起が設けられた部品と、相手側の部品を重ね合わせ、上下から平面状の電極で加圧します。この時点では、部品同士の接触は、突起の先端部という、非常に小さな面積でのみ起こっています。
- 電流集中と発熱: 次に、電極間に大電流を流します。電流は、この狭い接触面積を通らざるを得ないため、突起部分の電流密度は極めて高くなります。また、接触面積が小さいため、接触抵抗も非常に高くなります。ジュール熱の法則(Q = I²Rt)に従い、電流の二乗と抵抗に比例して、突起部分には瞬時に、かつ集中的に、莫大な熱が発生します。
- 突起の圧潰とナゲット形成: 発生した熱によって、突起は急速に加熱され、軟化・溶融します。同時に、外部から加えられている圧力によって、突起は押し潰され(圧潰し)、相手側の部品にくい込みます。この過程で、両部品の界面には、スポット溶接と同様のナゲットと呼ばれる溶融金属塊が形成されます。
- 凝固と接合完了: 通電を停止した後も、加圧はしばらく維持されます。この間にナゲットが冷却・凝固し、強固な接合部が形成されます。突起は完全に押し潰され、接合後の表面には、スポット溶接のような大きなくぼみ(圧痕)はほとんど残りません。
工学的な特徴と長所
この突起を利用した原理は、多くの優れた工学的利点をもたらします。
- 複数点同時溶接: 部品に複数の突起を設けておけば、一回の加圧・通電サイクルで、同時に多数の箇所を溶接することが可能です。これにより、生産性は飛躍的に向上します。ナット溶接などがこの典型例です。
- 電極寿命の向上: スポット溶接では、電極の先端という狭い面積に電流と圧力が集中するため、電極の摩耗が激しく、頻繁なメンテナンスが必要です。一方、プロジェクション溶接では、電流集中は部品側の突起が担うため、電極は比較的広い面積で部品に接触します。これにより、電極にかかる負担が大幅に軽減され、電極の寿命が格段に長くなります。
- 異種板厚の溶接: 厚さの異なる板同士を溶接する場合、スポット溶接では熱バランスを取るのが困難ですが、プロジェクション溶接では、厚い方の板に突起を設けることで、熱の発生を厚板側に集中させ、良好な溶接を容易に行うことができます。
- 精密な溶接位置: 溶接される位置は、突起が設けられた位置によって正確に決まるため、高い位置精度での接合が可能です。
- 美しい仕上がり: 突起が押し潰されることで接合が行われるため、電極による表面の圧痕が小さく、外観品質に優れます。
突起の設計と種類
プロジェクション溶接の品質は、突起の形状と寸法の適切な設計に大きく依存します。突起が高すぎたり低すぎたり、あるいは形状が不均一だったりすると、安定した溶接品質を得ることはできません。
突起は、プレス加工によって、部品の製造と同時に形成されることが一般的です。その形状には、以下のような種類があります。
- エンボスプロジェクション: 板材の一部を、円形や角形に、浅く絞り出すようにして形成する、最も一般的な突起です。
- ダボプロジェクション: 比較的小さな部品で、突起そのものが位置決めの役割も兼ねる場合などに用いられます。
- リングプロジェクション: 円周状に連続した突起を設け、気密性が必要な箇所などの線状接合に用いられます。
応用分野
プロジェクション溶接は、その高い生産性と信頼性から、特に大量生産される工業製品の組み立てに広く利用されています。
- ナット・ボルトの溶接: 板金部品に、ねじ止め用のナットやボルトを固定する、最も代表的な用途です。ナットには、溶接用に特殊な形状の突起があらかじめ設けられています。🔩
- 電気・電子部品: センサーの端子や、リレーの接点、モーターの整流子とコイルの接続など、小型部品の精密な接合。
- その他: 自動車部品(クロスメンバー、ブレーキ部品)、ワイヤーメッシュの交点、熱交換器のフィンとチューブの接合など。
まとめ
プロジェクション溶接は、部品自身に設けられた突起という「仕掛け」を利用して、抵抗溶接のエネルギーを、狙った場所に、精密かつ効率的に集中させる、巧妙な接合技術です。
その本質は、スポット溶接の原理を応用しながら、複数点同時溶接による生産性の向上と、電極寿命の延長によるコスト削減、そして美しい仕上がりという、多くの実用的な利点を実現した点にあります。自動車の組み立てラインで、火花を散らしながら次々とナットを固定していくロボットアームの姿は、まさにこのプロジェクション溶接技術が、現代の大量生産を力強く支えている象徴と言えるでしょう。


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