熱処理

機械材料

機械材料の基礎:可鍛鋳鉄

可鍛鋳鉄は、その名称にある可鍛、すなわち鍛造ができるかのような粘り強さを持つ鋳鉄という意味を持つ鉄系材料です。一般に鋳鉄と言えば、硬いが衝撃に弱く、叩くと割れてしまう脆い材料というイメージがあります。しかし可鍛鋳鉄は、鋳造によって成形された後、長時間の熱処理を施すことによって、その金属組織を根本から改質し、鋼に近い靭性と延性を付与された特殊な鋳鉄です。
加工学

機械加工の基礎:焼き戻し

焼き戻しは、焼き入れによって硬化させた鋼を、その変態点以下の適切な温度で再加熱し、冷却する熱処理操作です。英語ではTemperingと呼ばれます。この技術の工学的な本質は、焼き入れによって得られた、極めて硬いが同時にもろい「マルテンサイト」という不安定な組織を、熱エネルギーによって、より安定で、破壊に対する抵抗力が高い「靭性(ねばり強さ)」を持つ組織へと意図的に変化させることにあります。
加工学

機械加工の基礎:焼き入れ

焼き入れは、鉄鋼材料、特に鋼の硬度と強度を飛躍的に高めるために行われる、最も基本的かつ重要な熱処理技術です。その本質は、鋼を高温に加熱して特定の組織状態にした後、水や油などで急速に冷却することにより、鋼の内部にマルテンサイトと呼ばれる、極めて硬く、不安定な組織を意図的に生成させることにあります。このプロセスは、鋼の特性を根本から変える強力な手段であり、工具、刃物、歯車、軸受といった、高い耐摩耗性や強度が求められる、あらゆる機械部品の製造に不可欠です。しかし、焼き入れされたままの鋼は、硬さと引き換えに「もろさ」を抱えており、その真価を発揮するためには、必ず後続の「焼き戻し」という処理が必要となります。
機械材料

機械材料の基礎:マルエージング鋼

マルエージング鋼は、極めて高い強度と、優れた靭性(破壊に対する抵抗力)を両立させた、特殊な超高強度鋼です。その名称は、この鋼が持つ特異な強化メカニズムである「マルテンサイト組織をエージング(時効硬化)させる」ことに由来します。一般的な高強度鋼が、炭素を利用してマルテンサイト組織そのものを硬化させるのに対し、マルエージング鋼は、炭素含有量を極めて低く(通常0.03%以下)抑え、代わりにニッケルを18%程度と多量に含み、さらにコバルト、モリブデン、チタンといった合金元素を添加しています。このユニークな成分設計と、特殊な熱処理の組み合わせにより、他の鋼材では達成困難な、卓越した機械的特性が引き出されます。
表面処理

表面処理の基礎:水蒸気処理

水蒸気処理は、主に鉄鋼材料や焼結金属部品を、高温の過熱水蒸気雰囲気中で加熱することにより、その表面に緻密で安定した四三酸化鉄(Fe₃O₄)の黒色皮膜を生成させる、熱化学的な表面処理の一種です。一般的に「錆」と聞くと、赤く、もろく、腐食を進行させる有害な赤錆を想像しますが、この水蒸気処理は、意図的に「良性」の錆である黒錆を形成させ、材料表面に新たな機能性を付与する、高度に制御された技術です。
表面処理

表面処理の基礎:窒化処理

窒化処理は、鋼の表面に窒素を浸透、拡散させることで、極めて硬い窒化層を形成し、部品の表面特性を飛躍的に向上させる表面硬化熱処理の一種です。その最大の目的は、部品の耐摩耗性、耐疲労性、そして耐食性を高めることにあります。焼入れを伴う他の多くの表面硬化法とは一線を画す、窒化処理ならではの最大の特徴は、比較的低い温度で処理を行い、急冷を必要としない無変態硬化処理である点です。これにより、熱処理による部品の寸法変化や変形が極めて少ないという、絶大な工学的利点がもたらされます。
機械材料

機械材料の基礎:軸受鋼

軸受鋼は、ベアリング鋼とも呼ばれ、転がり軸受、すなわちベアリングの内輪、外輪、そして玉やころといった転動体を製造するために特別に開発された、特殊用途鋼です。ベアリングは、機械の回転部分を滑らかに支持し、摩擦を減らすという極めて重要な役割を担っています。その心臓部である転動体と軌道輪は、運転中に極小の点や線で接触しながら、非常に大きな荷重を繰り返し受け続けます。この極限的な状況下で、何億回、何十億回という回転に耐え抜くため、軸受鋼には他のいかなる鋼材にも見られない、特異で高度な特性が要求されます。
機械材料

機械材料の基礎:機械構造用炭素鋼鋼材

機械構造用炭素鋼鋼材は、その名の通り、機械を構成する歯車、軸、ボルト、クランクといった、様々な部品の材料として使用されるために設計された炭素鋼です。日本産業規格ではJIS G 4051に規定されており、その規格記号からS-C材という通称で広く呼ばれています。例えば、最も代表的なS45Cは、この鋼材ファミリーの代名詞的な存在です。
機械材料

機械材料の基礎:ばね鋼

ばね鋼は、その名の通り、ばね製品を製造するために特別に設計された鋼の総称です。ばねの最も重要な機能は、外部から力を受けて弾性的に変形することでエネルギーを吸収し、力が取り除かれると元の形状に復元してそのエネルギーを放出することにあります。この基本的な役割を果たすため、ばね鋼には他の鋼材とは一線を画す、極めて高い弾性限度が要求されます。
機械材料

機械材料の基礎:クロムモリブデン鋼

クロムモリブデン鋼は、炭素鋼に主要な合金元素としてクロムとモリブデンを添加した、低合金鋼の一種です。一般には、その成分の頭文字をとってクロモリという愛称で広く知られています。この鋼の最大の特徴は、熱処理を施すことによって、高い強度と、破壊に対する抵抗力である靭性(粘り強さ)を、極めて高いレベルで両立できる点にあります。ただ硬いだけでなく、しなやかさも兼ね備えているため、過酷な力がかかる構造部材や機械部品に理想的な材料として、長年にわたり絶大な信頼を得ています。
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