特殊鋼

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機械材料の基礎:マルエージング鋼

マルエージング鋼は、極めて高い強度と、優れた靭性(破壊に対する抵抗力)を両立させた、特殊な超高強度鋼です。その名称は、この鋼が持つ特異な強化メカニズムである「マルテンサイト組織をエージング(時効硬化)させる」ことに由来します。一般的な高強度鋼が、炭素を利用してマルテンサイト組織そのものを硬化させるのに対し、マルエージング鋼は、炭素含有量を極めて低く(通常0.03%以下)抑え、代わりにニッケルを18%程度と多量に含み、さらにコバルト、モリブデン、チタンといった合金元素を添加しています。このユニークな成分設計と、特殊な熱処理の組み合わせにより、他の鋼材では達成困難な、卓越した機械的特性が引き出されます。
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機械材料の基礎:軸受鋼

軸受鋼は、ベアリング鋼とも呼ばれ、転がり軸受、すなわちベアリングの内輪、外輪、そして玉やころといった転動体を製造するために特別に開発された、特殊用途鋼です。ベアリングは、機械の回転部分を滑らかに支持し、摩擦を減らすという極めて重要な役割を担っています。その心臓部である転動体と軌道輪は、運転中に極小の点や線で接触しながら、非常に大きな荷重を繰り返し受け続けます。この極限的な状況下で、何億回、何十億回という回転に耐え抜くため、軸受鋼には他のいかなる鋼材にも見られない、特異で高度な特性が要求されます。
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機械材料の基礎:機械構造用炭素鋼鋼材

機械構造用炭素鋼鋼材は、その名の通り、機械を構成する歯車、軸、ボルト、クランクといった、様々な部品の材料として使用されるために設計された炭素鋼です。日本産業規格ではJIS G 4051に規定されており、その規格記号からS-C材という通称で広く呼ばれています。例えば、最も代表的なS45Cは、この鋼材ファミリーの代名詞的な存在です。
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機械材料の基礎:ばね鋼

ばね鋼は、その名の通り、ばね製品を製造するために特別に設計された鋼の総称です。ばねの最も重要な機能は、外部から力を受けて弾性的に変形することでエネルギーを吸収し、力が取り除かれると元の形状に復元してそのエネルギーを放出することにあります。この基本的な役割を果たすため、ばね鋼には他の鋼材とは一線を画す、極めて高い弾性限度が要求されます。
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機械材料の基礎:クロムモリブデン鋼

クロムモリブデン鋼は、炭素鋼に主要な合金元素としてクロムとモリブデンを添加した、低合金鋼の一種です。一般には、その成分の頭文字をとってクロモリという愛称で広く知られています。この鋼の最大の特徴は、熱処理を施すことによって、高い強度と、破壊に対する抵抗力である靭性(粘り強さ)を、極めて高いレベルで両立できる点にあります。ただ硬いだけでなく、しなやかさも兼ね備えているため、過酷な力がかかる構造部材や機械部品に理想的な材料として、長年にわたり絶大な信頼を得ています。
既編

機械材料の基礎:高速度工具鋼(ハイス)

高速度工具鋼は、金属を削るための切削工具の材料として、現代の製造業において極めて重要な位置を占める鉄鋼材料です。一般にハイスピードスチール、あるいは単にハイスという略称で広く親しまれています。日本産業規格 JIS においては SKH という記号で分類され、ドリル、エンドミル、タップ、ホブカッター、バイトなど、多種多様な切削工具の素材として使用されています。この材料が登場する以前、金属加工には炭素工具鋼が用いられていました。しかし、炭素工具鋼は摩擦熱に弱く、切削速度を上げると刃先が焼き戻されて軟化し、すぐに切れなくなってしまうという欠点がありました。19世紀末から20世紀初頭にかけて開発された高速度工具鋼は、その名の通り、従来よりもはるかに高速での切削を可能にしました。これは、生産効率を劇的に向上させ、産業革命以降の機械文明の発展を根底から支えた歴史的な発明の一つと言えます。
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