機械要素の基礎:リベット

機械要素締結

機械要素の基礎:リベット

リベットは、ボルトやナットのようなねじ山の摩擦力による締結とは異なり、金属の円柱を穴に通した後に、その端部を大きな力で押し潰して意図的に塑性変形させることで、複数の部材を強力かつ半永久的に接合する機械要素です。

溶接のように部材自体を高温で溶かす必要がなく、熱による歪みや材料の劣化を引き起こさないこと、そしてボルトのように振動による「緩み」が原理的に発生しないことから、航空機の機体構造、橋梁、自動車のシャシー、さらには日常の生活用品に至るまで、高い信頼性と軽量性が要求されるあらゆる接合部において重要な役割を担っています。

塑性変形による締結

リベット締結の根幹は、金属材料が持つ「降伏点を超えた力が加わると、元の形に戻らなくなる」という塑性変形を利用する点にあります。

リベットの基本的な形状は、円柱状の軸と、あらかじめ片側に形成された直径の大きい頭部から成ります。接合したい二枚の金属板などの部材に、リベットの軸径よりもわずかに大きい下穴を貫通させ、そこにリベットの軸を通します。 その後、部材から突き出たリベットの軸の先端を、ハンマーや専用の油圧プレス機、あるいはリベットセッターと呼ばれる機械を用いて、軸方向に強大な力で押し潰します。

このとき、リベットの軸内部に発生する圧縮応力が材料の降伏応力を超えると、金属の結晶構造は横方向に押し広げられるように流動を開始します。この塑性流動によって、突き出ていた円柱状の軸の先端は、ドーム状や平らな円盤状の「隠れ頭」へと変形します。 結果として、二枚の部材は最初から存在していた元の頭部と、新しく形成された隠れ頭の間に強力な力で挟み込まれ拘束されます。同時に軸そのものも横方向に膨張して下穴の壁面に強く密着するため、部材同士が横方向にずれる動きも封じ込められます。

リベット継手の応力伝達

リベット継手に引張力が加わり、二枚の部材が互いに反対方向へずれようとする時、リベットの軸には部材の境界面において、ハサミで断ち切られるような「せん断応力」が作用します。 同時にずれる部材の穴の壁面は、リベットの軸の側面に強く押し付けられます。このとき、リベットの軸の表面と部材の穴の壁面に生じる圧縮応力を「支圧力」と呼びます。

リベット継手の強度は、この「リベットがせん断によって断ち切られる力」と「部材の穴が支圧によって押し潰されて広がる力」のいずれか低い方によって決定されます。 また、橋梁などで多数のリベットを並べて打ち込む多列リベット継手においては、応力はすべてのリベットに均等に分散するわけではありません。部材の端部に近いリベットほど、変形の蓄積により大きな応力を分担することになります。そのためどの順番でリベットを打ち込むか、あるいは補修時にどのリベットから取り外すかといった作業手順が、全体の強度バランスを崩さないための極めて重要な要素になります。

ブラインドリベットの構造

従来のリベット(ソリッドリベット)による締結は、リベットを叩き潰すために、部材の表と裏の両方から作業者がアクセスし、同時に力を加える必要があるという制約がありました。例えば、細いパイプの内部や、壁に密閉された箱の表面に部品を取り付けることは不可能です。 この裏側に手が届かない空間での締結を可能にしたのが、航空機産業から生まれ、現在最も広く普及しているブラインドリベットです。

ブラインドリベットは、単なる金属の円柱ではなく、二つの部品で構成されています。一つは、部材に挿入される円筒状の「ボディー」、もう一つは、ボディーの中心を貫通する長い釘のような形状の「マンドレル」です。マンドレルの先端には、ボディーよりも直径の大きい球状または円錐状の頭がついており、軸の途中には意図的に弱く作られた破断部が設けられています。

部材の片側(表側)から、ブラインドリベットのボディー部分を下穴に挿入します。表側に残ったマンドレルの軸を、リベッターと呼ばれる専用の工具で掴みます。 リベッターのトリガーを引くと、工具はボディーの頭部を部材に強く押し付けながら、マンドレルを強力な力で手前に引き抜こうとします。

マンドレルが引き上げられると、裏側にあるマンドレルの大きな先端頭部が、ボディーの円筒内部に強引に引きずり込まれます。ボディーの金属はマンドレルの頭部によって内側から強烈な力で外側へと押し広げられ、裏側の空間でちょうちんのように膨らみ、大きな「隠れ頭」を形成します。 この膨らんだボディーが裏側から部材を強く引き付け、表と裏で部材を完全に挟み込みます。

部材が完全に密着しこれ以上マンドレルを引き込めなくなった時、マンドレルの軸にかかる引張応力が限界に達し、あらかじめ設けられていた破断部でちぎれ飛びます。 部材の内部には、変形して部材を固定したボディーと、その中に噛み込んだマンドレルの先端部分だけが残り、締結が完了します。

ブラインドリベットの種類

ブラインドリベットは、締結する部材の材質や環境に対する要求に応じて、ボディー(胴部)の変形挙動やマンドレルの処理方法が細分化されています。

  • 丸頭と皿頭:表側に残る頭部の形状です。標準的な丸頭に対し、皿頭(沈頭鋲)は部材の表面を完全に平滑にするために用いられ、空気抵抗を減らす航空機の外板などで必要となります。
  • 開放形と密閉形:一般的な開放形(オープンタイプ)は、マンドレルが引きちぎられた後、ボディーの中心に貫通穴が残ります。一方、密閉形(シールドタイプ)は、ボディーの裏側が袋状に完全に塞がっており、マンドレルの先端もその袋の中に完全に包み込まれて残ります。これにより、水や気体の漏れを防ぐ防水性・気密性を発揮し、屋外機器や電子基板を収める密閉ケースの組み立てに威力を発揮します。
  • ラージフランジと軟質材用(PLタイプ):ボディーの表側の頭を非常に大きくしたラージフランジや、裏側で変形する際にボディーが四方向へ花びらのように大きく割れて広がるPLタイプがあります。これらは、プラスチック、ゴム、木材など、通常の小さな頭部では部材にめり込んでしまったり、部材を割ってしまったりする軟らかい材料を保持するための構造です。
  • 高圧着・高せん断タイプ:ボディーの変形をより大きくして部材を強力に引き付けるタイプや、破断するマンドレルの芯棒を意図的にボディーの頭部付近まで長く残すことで、リベット全体の金属の断面積を増やし、横方向のズレに対するせん断強度を高めた構造も存在します。

中空リベットと打込リベット

ブラインドリベットとは異なるアプローチで、製造ラインの自動化や高速化に貢献する特殊なリベットも存在します。

中空リベット(チューブラリベット)

軸の中心が空洞になっている、パイプ状のリベットです。ソリッドリベットのように金属の塊を押し潰すのではなく、パイプの薄い壁を外側にめくり返すように塑性変形させてカシメます。 変形させる金属の体積が少ないため、カシメるために必要な圧力が小さくて済みます。これにより、小型で安価なプレス機での高速な連続打ち込みが可能となり、プリント基板の端子固定や、文房具、カバンなどの薄い金属や皮革の組み立てにおいて高い生産性を誇ります。また、中空の穴を利用して他の部品を通したり、デザインのアクセントとして利用されることもあります。

打込リベット(セルフピアシングリベット:SPR)

あらかじめ部材に下穴を空けるという、リベット締結の常識を覆した技術です。 先端が鋭利に尖った、あるいは特殊な形状をした硬いリベットを使用し、高圧の専用ガンで部材に直接撃ち込みます。リベット自体がポンチの役割を果たして一枚目の部材を貫通し、二枚目の部材にめり込んだところで、下敷きとなっているダイ(受け型)の形状に沿ってリベットの先端が横方向に広がり、部材の内部でアンカーのように食い込んで結合します。 下穴を開ける工程と、発生した切り屑を取り除く工程が完全に不要となるため、自動車のアルミ製ボディフレームの組み立てなどで、溶接に代わる高速な接合プロセスとして利用されています。

溶接に対する優位性

リベットが現代の産業において評価されている理由は、そのプロセスが熱を一切発生させない「完全な冷間接合」であるという優位性にあります。

アーク溶接やスポット溶接などの溶融溶接は、金属を数千度に加熱して溶かし合わせます。この過程で、金属の結晶組織が熱によって変化し、周辺の強度が低下する「熱影響部」が必ず形成されます。また加熱と冷却に伴う体積の膨張・収縮により、部材全体に大きな反りや歪みが生じてしまいます。高張力鋼板(ハイテン)や、航空機用の超々ジュラルミンのような、熱処理によって限界まで強度を高めた合金は、溶接の熱を加えた瞬間にその高い強度が失われてしまうため再度熱処理が必要になります。

リベットは、これらの高機能な合金に対して、材料の組織を破壊することなく、本来の強度のまま結合させることができます。 さらに、アルミニウムと鉄、あるいは炭素繊維強化プラスチック(CFRP)と金属といった「性質の異なる材料同士」を接合する場合、溶接では融点の違いや脆い金属間化合物の発生によって結合が困難になりますが、物理的な拘束力のみに依存するリベットであれば、相手の材質を問わず、どのような組み合わせであっても強固に締結することが可能です。 自動車の軽量化に向けたマルチマテリアル化が進む中でこの異材接合能力は、次世代の車体構造を構築する上重要な要素になっています。

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