流体機器の基礎:ルブリケータ

機械要素配管

ルブリケータは空気圧システムにおいて、乾燥した高圧の圧縮空気にオイルミストを混入させ、配管を通じて下流にあるエアシリンダやエアモータといった作動機器へと潤滑油を送り届ける給油装置です。

コンプレッサから吐出された空気は、システムに組み込まれたフィルタやドライヤによって水分やゴミを取り除かれ、レギュレータによって圧力を一定に保たれます。この乾燥した空気は、そのままでは金属同士が高速で擦れ合うアクチュエータ内部の摩擦を増大させ、焼き付きや異常摩耗を引き起こします。ルブリケータは、高圧空気の中に油を霧状に分散させ、空気圧システムの末端まで潤滑材を補給する機能があります。

ベンチュリ効果による吸い上げ

ルブリケータの内部には、空気が通過する主流路の一部が極端に狭く絞られたベンチュリ管が存在します。高圧の空気がこの絞り部を通過する際、空気の流速は急激に上昇します。

理想流体におけるベルヌーイの定理は、流体の静圧p、密度ρ、および流速vの関係が以下の式で表すことができます。

この方程式が示す通り、流体の流速vが上昇した場所では、流体が周囲の壁面を押す圧力である静圧pは低下します。ベンチュリ部の狭い空間では、流速が高くなると同時に静圧が局所的に大きく降下し、周囲の空気圧よりも低い負圧空間が形成されます。

一方、ルブリケータの下部にあるオイルを貯蔵したタンクの内部の液面には、上流側から分岐した高い圧力を持つ一次側の圧縮空気が作用しています。このタンク内の高い圧力と、ベンチュリ部で発生した低い負圧との間に差圧が生じます。この差圧が駆動力となり、オイルは細いサイフォンチューブを通って上方の滴下窓へと力強く吸い上げられます。

潤滑油の微粒化

吸い上げられたオイルがそのまま液滴として配管に流れ込んでしまうと、重力によってすぐに配管の底に堆積し、目的の機器まで到達しません。オイルをシステムの末端まで運ぶためには、オイルを空気中に長時間浮遊し続けることができるエアロゾルへと変換する微粒化が必要です。

サイフォンチューブを上がってきたオイルは、本体上部に設けられたサイトドームの中で、ニードルバルブによって流量を調整されながら、一滴ずつ落下します。この滴下したオイルの雫が、ベンチュリ部を高速度で駆け抜ける圧縮空気のジェット流に直撃します。高速な気流と粘性を持つ液体との間で猛烈なせん断応力が発生します。気流のエネルギーが液体の表面張力を打ち破り、大きな液滴を無数の微小な粒子へと粉砕します

粉砕されたオイルミストは、空気の分子運動によるブラウン運動や、乱流による拡散作用の助けを借りて、圧縮空気の気流に乗り配管内を浮遊して流れていきます。油滴のサイズが小さければ小さいほど、空気抵抗に対する質量の比率が小さくなるため、沈降速度は遅くなり、配管の曲がり角や分岐を越えて遠くまで到達することが可能になります。

標準型とマイクロフォグ型の分級メカニズム

配管システムの複雑さやオイルを届けるべき距離に応じて、ルブリケータは生成する油滴のサイズを制御するための二つの異なる構造に分化しています。

第一の形式がマクロフォグ型です。ベンチュリ部で粉砕されたオイルミストを、そのまま全量配管へと送り出す構造です。

生成される油滴のサイズは十マイクロメートルから数十マイクロメートルと比較的大きく、重力による沈降速度が速いため、水平配管を長距離移動させると配管の底に油が溜まってしまいます。また、配管が垂直に立ち上がる部分を越えることは困難です。そのため、ルブリケータから数メートル以内の近距離にある大型のエアシリンダや、大容量の潤滑を必要とするエアツールに対して、十分な量のオイルを直接供給する用途に適しています。

第二の形式がマイクロフォグ型です。長大で複雑な配管網の末端までオイルを確実に届けるために開発された高度な分散機構を持っています。

ベンチュリ部で粉砕された直後のミストには、微細な粒子と大きな液滴が混在しています。マイクロフォグ型では、この混合ミストをそのまま配管に流さず、一旦オイルタンクの上部空間や専用のチャンバー内に導き、内部に設けられたバッフルと呼ばれる衝突板に激突させます。

慣性衝突の原理により、質量の重い大きな液滴は気流の急激な方向転換に追従できず、バッフルに衝突して壁面を伝い落ち、再びオイルタンクへと戻っていきます。一方、質量が極めて軽く空気抵抗に追従できる二マイクロメートル以下の微細な粒子だけが、バッフルを迂回して気流に乗り、二次側の配管へと流れ出します。

この分級プロセスを経たマイクロフォグは、煙のように空気に溶け込んだ状態となり、数十メートルの長距離配管や複雑なマニホールドの分岐、さらには垂直配管の上方へも沈降することなく到達します。超高速で回転する精密なエアスピンドルや、微小なバルブ群の潤滑において、システム全体に均一な油膜を形成するのに威力を発揮します。

ルブリケータの絶対的必要性

近年、空気圧機器の分野では自己潤滑性を持つ特殊なパッキンやシール材の開発が飛躍的に進み、ルブリケータによる給油を一切必要としない無給油システムへの移行が進んでいます。食品機械や半導体製造装置など、オイルミストによる排気環境の汚染が致命的となるクリーンな産業領域においては、ルブリケータは排除される傾向にあります。

しかし、過酷な物理的条件が支配する領域においては、今なおルブリケータが提供する液体の潤滑油が機械の寿命を左右します。例えば、建設現場や自動車整備で用いられるエアインパクトレンチや、大型のベーン型エアモータがあげられます。これらの機器の内部では、金属製の羽根やハンマーが毎分何千回転という超高速で激しく摩擦し、激突を繰り返しています。

自己潤滑性の樹脂部品では、この強烈な接触面圧と摩擦熱に耐えきれず、瞬く間に溶融や摩耗を引き起こし破壊されてしまいます。このような境界潤滑領域においては、金属表面に強固な油膜を形成し、金属同士の直接接触を物理的に引き離して流体潤滑状態へと移行させる潤滑油の存在が不可欠となります。

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