政府は11月2日、事前防災から発災時の対応、復旧・復興までを一貫して担う司令塔組織「防災庁」を発足させた。内閣府の防災担当部局を母体に始動し、初代防災大臣には細野豪志氏が就いた。新たな省庁の設置は2021年9月のデジタル庁以来。発足初日には国民、地方公共団体、各府省庁に向けて「事前防災徹底のための緊急要請」を出し、住宅の耐震化や家具の固定、最低3日分・できれば1週間分の水と食料の備蓄などを求めた。
防災庁の概要
防災庁は、7月17日に公布された防災庁設置法に基づく内閣直属の組織。9月30日公布の施行期日政令で、同法の施行日が11月2日と定められた。庁の長は内閣総理大臣で、事務は防災大臣が統括する。
政府全体の防災施策を企画・立案し総合調整する役割を担い、内閣府に置かれていた中央防災会議も防災庁に移った。防災大臣には関係行政機関の長に対する勧告権が与えられ、勧告を受けた機関はこれを尊重する必要がある。なお原子力災害に関する防災は引き続き内閣府が担当し、東日本大震災からの復興に関する一部の事務も復興庁が存続する間は同庁が担う。

体制
定員は352人で、内閣府防災担当から拡充した。副大臣と大臣政務官を各1人、事務次官を1人置くほか、局長級の統括官4人、審議官2人、参事官15人を配置する。内部組織は次の4部門で構成する。
- 総合政策部門:予算・会計、人事、広報、庁全体の政策調整、防災技術の研究開発・実装
- 災害事態対処部門:大規模災害への対処、訓練、人材育成
- 防災計画部門:災害リスク評価、計画の企画・立案と対策推進、復旧・復興の基本政策
- 地域防災部門:自治体との連携、被災者支援体制の構築、普及啓発・防災教育
本庁は東京に置く。地方拠点として「防災局」を2カ所設ける方針で、南海トラフ地震と日本海溝・千島海溝地震を念頭に、設置法の公布から2年以内に政令で定める日から設置する。具体的な場所は決まっていない。
発足初日に「緊急要請」
緊急要請は、国難級の災害では行政のリソースが逼迫することから、国民一人ひとりや自治体、行政機関に事前防災の徹底を求めるもの。千島海溝地震、日本海溝地震、首都直下地震、南海トラフ地震、富士山噴火を懸念される国難級の災害として挙げている。
国民への要請
- 住宅の耐震化・家具の固定(1981年以前の建物は耐震診断を推奨。費用が大きい場合は寝室など一部の補強で安全な空間を確保)
- 最低3日分、できれば1週間分の水・食料の備蓄(飲料水は1人1日3リットルが目安。携帯トイレなどの生活用品も)
- ハザードマップによる自宅・職場のリスクと避難場所・避難経路の確認
- 非常持ち出し品の準備
- 防災訓練への参加
地方公共団体への要請
都道府県に対し、市町村を含めた実施状況の点検と市町村への支援を求めた。
- 防災人材の育成(研修・訓練)
- 受援体制の確保(国の現地対策本部の設置スペース確保を含む)
- 指定避難所や備蓄、TKBB(トイレ・キッチン・ベッド・バス)など避難生活環境の改善
- 災害協定の締結と実効性の確保
- 災害中間支援組織の整備
- 個別避難計画の作成
- 帰宅困難者対策
- 応急仮設住宅用地候補などの事前選定
各府省庁への要請
- 各府省庁のBCP(業務継続計画)の点検・見直し
- 南海トラフ地震基本計画などの「重要な目標」のうち主要な施策の推進
- 所管分野の企業・団体などへの事前防災の徹底
企業・団体への徹底事項としては、建物の耐震化、設備・什器の転倒防止、避難経路の明確化、従業員の安否確認体制や災害時の指揮命令体制の整備、教育・訓練、食料・飲料水・医薬品・トイレなどの備蓄、BCPの策定と実効性の確保を挙げている。建設やインフラ、物流などの事業者にも、所管省庁を通じて取り組みが求められることになる。
年末に進捗を報告、勧告権の行使も
都道府県と各府省庁は年末に進捗を報告する。企業や国民向けの要請については「企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」や「防災に関する世論調査」などで点検する。取り組みが不十分な場合は、必要に応じて再要請や勧告権の行使、予算執行への反映を行うとしている。
出典:防災庁「事前防災徹底のための緊急要請」(2026年11月2日) https://www.bousai.go.jp/juyou/emergency_request.html


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