清水建設は10月26日、免震建物が設計レベルを超える地震で免震層の側壁に衝突するのを防ぐ「S-TOPダンパー」を開発・実用化したと発表した。新築・既存を問わず、あらゆる免震建物に適用できる汎用的な対策で、簡易な装置を後付けして免震性能を補う。新築案件に加え、全国に5,000棟以上ある既存の免震建物に提案していく。
開発の背景
免震建物は、周囲の免震層側壁との接触を防ぐため「免震クリアランス」と呼ぶすき間を設けている。しかし2016年の熊本地震では、積層ゴムが大きく変形して側壁に衝突しかけた建物があり、今回の熊本地震でも積層ゴムが損傷した建物があった。
衝突を防ぐ根本的な手法はまだ確立されていない。クリアランスを広げる方法は既存建物に適用できず、新築でもコストや敷地条件の制約がある。ダンパーを追加する方法は、頻度の高い中小地震での免震効果を損なううえ、建築確認の再取得が必要になり工期が延びるといった課題があった。
仕組み
S-TOPダンパーは、免震層の上部と下部の構造体にそれぞれ固定した鋼製の支承を、長さ約5mの鋼棒ダンパーでつなぐ。鋼棒の一端は筒状の機構の中を緩やかにスライドする構造で、免震クリアランスに相当する余長(遊び)を持たせている。
中小地震では鋼棒が筒の中を滑るだけで力を負担せず、免震効果を損なわない。揺れがクリアランスの限界に近づくと、鋼棒が引張力や圧縮力を負担して揺れを吸収し、側壁への衝突を防ぐ。
設置可能な台数や想定する地震動の特性に応じて、2つのタイプから選べる。
| タイプ | 材料 | 長さ | 径 |
|---|---|---|---|
| 引張圧縮型 | 普通鋼(SS400相当) | 約5.2m | 芯材60mm(外筒190mm) |
| 引張型 | 高張力鋼(普通鋼の約2.5倍の強度) | 約5m | 42mm |
実大試験で性能を確認
免震研究推進機構が保有する実大免震試験機「E-Isolation」で、実物大のS-TOPダンパーに大振幅地震動に近い最大振幅±710mm、最大速度80cm/sの加力試験を実施した。大地震レベル以下では鋼棒が力を負担せず、大振幅領域では一般的な免震用オイルダンパーの約2倍にあたる最大1,600kNの反力を発揮することを確認した。
第一三共の研究棟に初適用
第一三共の品川研究開発センター内で建設中の研究棟に、引張圧縮型8基を設置した。建築基準法の設計レベルを超える地震に見舞われても、建物を継続して使用できるようにする。このほか、他の顧客の4件のプロジェクトでも採用が決まっている。
- 建築主:第一三共
- 所在地:東京都品川区広町1-2-58
- 規模:地上8階、塔屋2階、延べ面積63,398m²
- 工期:2024年11月1日~2027年12月31日
- 設計・施工:清水建設
出典:清水建設ニュースリリース(2026年10月26日) https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2026/2026034.html



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